って面白いと思う。 他の奴らは目もくれない僕たちに、何故か構ってくれる。 大人のくせに喜怒哀楽も激しいし、しっかりしてるようで実は結構ドジだったりもする。 こっそりのデザートを食べると、僕より年上なのに怒るし…。 資料を取りに行って、間違って違う本を3冊も持って帰ってきたりもする。 でも僕らの事を本当に心配してくれる、"初めて"の人。 以前は、そう言う人が僕の周りにもいたのかな? 「、いる?」 ドアが開くと同時に発した声に反応して、がこっちを見るなり、驚きの声を上げた。 「クロト!?何やってんの!!」 「訓練で怪我した。介護して」 「ちょっと、まって」 そう言って、が医療器具(と言っても包帯とかそういうのだけど)が入った箱を持って、駆け寄ってきた。 真っ白なタオルを僕が怪我した 右腕に押さえつけると、みるみるうちに血で押さえた所が染まっていく。 「なんですぐ止血しないの!」 「だってタオルなかったし、これ位、大したこと無いし」 「そう言う事を言ってるんじゃないの。どうして、もっと自分の体を心配しないのかって言ってるの」 口で説教する一方、手は止まることなく忙しなく動いてる。 消毒液が傷にしみた。 「、もっと優しくやってよ」 「嫌よ」 嫌よって言われてもね…。結構、痛いんだよ? 「痛いって事は、"生きてる"って 事なんだから…。もっとそれを自覚しなさい」 の言葉に、そういう考えもあるんだと、妙に感心した。 そして僕がそんな事を思っている間に、の作業は終了したらしく、よし、OK!と言うと、右手には綺麗に包帯が巻かれていた。 「ありがとう」 「いいえ。これも仕事のうちだしね。っうか、初めて仕事らしい事をしたって気がするんだけど…」 僕たちの体調管理を任されているだけど、γグリフェプタンが定期的に与えられている今の状態では、僕たちは体調が悪くなったりするあまり事は無い。まぁたまに訓練とかで気持ち悪くなったり、あいつ等の"テスト"の所為で苦しい時もあるけど…。 「他には怪我ない?」 「うん、ないよ」 「そう、ならよかった」 と言って、は僕の頭をぽんっぽんっと叩いた。 子ども扱いだと思っていると、は僕の事を見て、にっこりと笑った。 「今度から気をつけてね」 道具を元の場所に戻すと、は僕にここで待っているようにと言って、部屋を出てった。 「はい、これ」 そう言って、右手に持っていたカップを1つ僕に差し出した。 「ありがとう」 カップの中身はホットミルクのようで、凄く甘い香りがする。 どうやら僕の為に、わざわざ作りに行ってきたようだ。 「クロトってミルク平気だったよね?」 「うん、大丈夫だけど」 そう言って、一口飲む。 あれ?凄くホッとする。どうしてだろう? も僕の目の前に座って、同じようにホットミルクを飲んでる。 ちょっとの間、見てたら気付いたようで、目が合った。 「どうしたの?クロト」 「いや、なんかホッとするなぁって思って」 そう言うとが少し子供っぽく笑った。 「知らないの?クロト。ホットミルクにはね、魔法の力があるんだよ」 「魔法の力?」 「そう。人の心を癒してくれる力がかかってるの。だからホッとするんだよ」 真剣に、それでも優しく言うを見ていると、僕よりも年上には思えず、思わず笑ってしまった。 「って結構、ロマンチスト?」 「結構は余計よ」 笑ったのが気に入らなかったのか、口を尖がらせている。 やっぱり年上らしくない。 「そう言えばって、兄弟いる?」 「えっ?急にどうしたの?」 「なんか、僕たちの扱いなれてる気がしたから…」 僕たちが 年下って所為もあるのかもしれないけど、は僕たちの面倒を見るのが凄くうまいと思う。シャニがソファーで寝てると、うまい具合に起こして自室に行かせて寝かせるし、 結構大人びてるオルガに対しても、やっぱり気が利いて本とか持ってきてるし、僕にも今みたいに優しく接してくれたりしてる。 「残念ながら、私は一人っ子よ」 「えっ!?そうなの?」 「えぇ。でも…」 「でも?」 「弟みたいに手のかかる 友達が一人だけ居たわ」 そう言うの姿が、妙に痛々しく感じられた。 今は"いた"って言ったよね。もうそいつは居ないのかな? そう思った時、部屋のドアが開いた。 「たち、何飲んでるの?」 僕同様に訓練を終えたシャニだ。 「ホットミルクだよ。シャニもいる?」 「うん」 「わかった。ちょっと待っててね」 そう言って立ち上がったの表情はいつも通りで、さっきの嫌なオーラは消えていた。 「あっ、オルガ。オルガもホットミルクいる?」 丁度オルガも訓練が終わったらしく、ドアの所で行き会った。 「俺はコーヒーの方がいいな」 「OK。じゃあ、ちょっと行ってくるから」 そう言っては部屋を出て行った。 「クロト、お前訓練で失敗したのか?」 少し経って、腕の包帯に気付いたらしく、オルガが聞いてきた。 「まぁーね」 「お前、隙がありすぎなんだよ」 「ちょっと油断しただけだよ」 「そう言うのを隙って言うんだろ」 オルガと言葉を交わしていて、妙な感覚がした。 「最近、オルガ変わった?」 「はぁ?何言ってるんだ?」 「だって僕が以前、怪我した時はそんなの気にもしなかったじゃんかよ」 「そうだっけか?」 「うん」 「クロトだって変わったんじゃない?」 そう言ったのはシャニだ。 「僕のどこが変わったっていうんだよ?」 「前より、少し丸くなった」 そうかな? 自分では、そんなつもりは無いから、人に言われてもいまいちピンと来ない。 「それならシャニもだろ。最近、よく起きてるしな」 「そっか…」 どうしてだろ? どうして僕たち変わったんだろ? 「お待たせ。ホットミルクとコーヒー持ってきたわよ」 カップの乗ったトレーを持って、が戻ってきた。 「サンキュー」 「ありがとう」 オルガとシャニがカップを受け取ってる姿を見て、一つの考えが 頭をよぎった。 あっ!そっか…。が来たからだ。が来たから僕たち変わったんだ。 退屈な毎日と思考の止まった頭。何も楽しい事なんかなくて、いつもつまらなかった。 それをが変えてくれたんだ。 「ねぇ、」 オルガと話しているに声を掛けると、僕のほうを見た。 「何?クロト」 「ありがとう」 「えっ?」 首を傾げるに背を向けて、僕はゲーム機に手を伸ばした。 後ろでは、未だにが何のこと?って言っている。 一体何がをあんなに苦しめてるのか分からないけど、僕は守りたい。 と過ごす、"今"と言う日常を…。 |
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